これまでの受賞作品 第3回
大辞泉が選ぶ新語大賞

  • 大賞

    【空白恐怖症】

    自分の仕事がないときに、あたかも仕事をしているように見せるためにダミーの予定やフェイクの予定を入れるほど、自分の予定が空白な事を恐れること。

  • 次点

    【卒婚】

    結婚の卒業。結婚という形式は維持しながらも、夫婦が互いに干渉せず、それぞれの人生をそれぞれに歩んで行く。

  • 次点

    【ご飯論法】

    言い逃れ答弁の論法で、「朝ごはんを食べましたか?」という質問に「(朝、パンは食べたけど、ごはん=米飯は)食べていない」と答えるようなやり方。

2018年
新語投稿数
ベスト11

  • 【億り人】
  • 【フェアプレーポイント】
  • 【じたハラ】
  • 【空白恐怖症】
  • 【介護脱毛】
  • 【いみふ】
  • 【スーパーボランティア】
  • 【まるっと】
  • 【卒婚】
  • 【多浪生】
  • 【ご飯論法】

選評

選考委員

『明治大学国際日本学部教授』田中 牧郎 たなか まきろうの顔写真

明治大学国際日本学部教授

田中 牧郎 たなか まきろう

1962年・島根県生まれ。東北大学文学部・卒業。東北大学大学院文学研究科・修士課程修了。東京工業大学大学院社会理工学研究科・博士課程修了。明治大学国際日本学 部・教授。国立国語研究所・運営会議委員。主な著書に『図解 日本の語彙』(三省堂/共著)。『近代書き言葉はこうしてできた』(岩波書店)。『コーパ スと日本語史研究』(ひつじ書房/共著)ほか。

総  論

田中牧郎教授の選評

第3回「大辞泉が選ぶ新語大賞2018」には、【空白恐怖症】を選びました。「~症」と付きますが、医学界でできた言葉ではありません。スケジュール帳に空白があることが怖くて、予定で埋めたくなってしまう心情のことを、病気にたとえて言う言葉で、ビジネス界でできたと思われます。2018年生まれた言葉ではないようですが、投稿が複数あったということは、今の時代の一面を映した表現なのだと思います。

現代は、常に忙しくしていることが、充実していてよいという価値観が強くあります。予定がない=充実していない=自分の人生これではいけない、というような強い自己否定の心情につながるのでしょうか。また、次のように考えることもできます。「あなた暇だね」「暇人」というのが罵倒語になるのは、暇であること=誰からも必要とされていない=大人としての能力欠如、といった連想を呼び起こすからですが、他人に暇だと思われることがこの上なく怖いのかもしれません。それは、SNSで、友達の多さをアピールする心理との共通性も感じます。【空白恐怖症】は、社会人だけでなく、主婦や学生にもあるようです。

これまで『大辞泉』に載っていた「○○恐怖症」は、「赤面恐怖症」「対人恐怖症」「高所恐怖症」など、ある状況で陥った身体的なパニックに、また襲われるのではないかと心配する恐怖感のものでした。2018年もう一つ投稿のあった「帰宅恐怖症」も、家で妻に怒られたり責められたりした苦しい状況に陥るのを心配する恐怖感ですから、従来の「○○恐怖症」と、基本的に同じ意味です。ところが、【空白恐怖症】は、スケジュール帳が空白であることで、危機に陥ったり、誰かに咎められたりした経験に基づくわけではありません。観念的な恐怖感を「○○恐怖症」と表したところが意味的にも新しく、新語大賞とするのにふさわしい言葉です。

次点には【卒婚】と【ご飯論法】を選びました。離婚はせずに、お互いの生き方を尊重する新たな人生に踏み出す【卒婚】は、選考会のあと、元貴乃花親方の離婚が報じられ、元親方は、自らの選択は【卒婚】であると記者に語ったといいます。それが一般化すると、離婚をした上で、それぞれが新たな人生を生きる、という意味も帯びてきます。新しい言葉だけに、意味の変化は注意深く追う必要があります。

朝食にパンは食べたのに米のご飯は食べてないからと、「朝ご飯食べたか」という質問に、「ご飯は食べてない」とはぐらかす【ご飯論法】は、現政権の政治姿勢への批判の言葉の中で、特に力を持ちました。強く印象に残る新語が、2017年の「忖度」に続いて、政権批判の現場から出ることになりました。

『大辞泉』に採用が
決定した
新語をご紹介します

キャンペーン期間中に投稿された
新語の中から、
実際に『大辞泉』に採用する可能性のある
新語を編集部が毎月選定しました。
合計44語の新語が選ばれました。

皐月

5

  • 【写真詐欺】

    出会い系サイトやSNSなどで自らを美しく加工した写真で異性を騙すこと。

  • 【億り人】

    投資で1億円以上の資産を築いた人。

  • 【回し車】

    ハムスターやハツカネズミなどの運動具。檻に取り付けた回転体で、動物が内側を走って回す。

  • 【長財布】

    紙幣を折らずに収納できる長方形の財布。

  • 【マウントを取る】

    相手よりも上の立ち位置を取り、相手に対して優位性を保つ・威圧的な態度を取ること。

水無月

6

  • 【空白恐怖症】

    自分の仕事がないときに、あたかも仕事をしているように見せるためにダミーの予定やフェイクの予定を入れるほど、自分の予定が空白な事を恐れること。

  • 【キッチンリセット】

    使用後のキッチンを元のキレイな状態に戻し、新品の状態を保つこと。

  • 【VAR】

    スポーツ競技や試合の判定に、録画記録やコンピューターの解析を用いる仕組み。ビデオアシスタントレフェリー制。

  • 【フェアプレーポイント】

    あの日本が予選2位で通過できた、嘘のようなシステム。

  • 【ツイパク】

    SNSのTwitterにおいて、他人のつぶやきを自らが発信者のようにつぶやくこと。ツイッターとパクるの合成語。

  • 【まるっと】

    ①丸みを帯びたさま。②まるごと。

文月

7

  • 【推しメン】

    アイドルグループのなかで、最も好きなメンバーのこと。

  • 【秘境駅】

    利用客が激減した駅のうち、道路など他の交通の便が悪く訪ねるのに時間がかかる駅。

  • 【黒板アート】

    黒板にチョークなどを使って描いた絵で表現したアート。黒板のない普通の家ではできない。

  • 【夫源病】

    定年退職などをきっかけに、夫の在宅時間が増えることによるストレスで、妻の心身に不調をきたすこと。

  • 【子作り】

    夫婦間などで、子供をもうけること。また、そのための準備をすること。

  • 【シャイニングマンデー】

    日曜日の夜まで遊び、月曜日は午後出勤することを推奨するため、経済産業省が検討している呼称。プレミアムフライデーが定着しないことへのニの矢。

葉月

8

  • 【危暑】

    危険な暑さ。

  • 【スーパーボランティア】

    経験豊富で、リーダーとして現場のとりまとめをこなせるボランティア。

  • 【リンクコーデ】

    複数人が、同じ製品のおそろいでなく、違う品だが色やデザインを合わせた衣服を着るコーディネート。

  • 【ちぎりパン】

    むちむちの赤ちゃんの腕のこと。見た目がまるでちぎりパンに見えることから。

  • 【ペスカタリアン】

    動物の肉を食べない人たちのこと。

  • 【手入力】

    コンピューターで、コピーアンドペーストや自動入力などによらず、キーボードを用いて文字を入力すること。

長月

9

  • 【じたハラ】

    時短ハラスメントの略。上司が、仕事が残っているにもかかわらず部下に残業を許可せず帰宅を促す圧力をかけること。

  • 【顔バレ】

    俗に、インターネット上で、今まで隠していた顔が判明されること。

  • 【スマートインターチェンジ】

    高速道路のサービスエリアなどに設置されたETC専用のインターチェンジ。

  • 【いみふ】

    意味不明の略。

  • 【シャツイン】

    パンツの中にシャツを入れるファッション。

  • 【ミラーゲーム】

    試合をする両チームが同じフォーメーションで戦うこと。

  • 【帰宅恐怖症】

    妻とのやりとりなどで疲れ、帰宅が億劫になり、仕事が終わってもまっすぐ家に帰れない症状。

神無月

10

  • 【卒婚】

    結婚の卒業。結婚という形式は維持しながらも、夫婦が互いに干渉せず、それぞれの人生をそれぞれに歩んで行く。

  • 【介護脱毛】

    介護が必要になることに備えて、介護者の作業を減らすよう自らの陰毛などを剃っておくこと。

  • 【横持ち】

    荷主から配送先への運送の過程で発生する中継地点への輸送。例えば荷主の製造工場から配送センターの倉庫への輸送など。

  • 【Tリーグ】

    2018年10月24日に日本で開幕した卓球のリーグ。国内外の選手がリーグ戦で戦う。手をTの文字にするポーズが流行り始めている。

  • 【縦読み】

    言葉遊びの一つ。横書きの文章を書く際に、特定の行(特に先頭の行)に用いる文字を定めておき、その行の文字を縦に読んでも文章や言葉として成立するように書いたもの。また、そのように読むこと。

  • 【御前会議】

    企業などで、経営トップが臨席する会議。

霜月

11

  • 【多浪生】

    大学入試への浪人回数が多い受験生。

  • 【姉活】

    女性が男性に対し、姉として資金援助を行う活動。血縁関係はない、異性の友人付き合いの一環。

  • 【爆買い外交】

    優位な経済力を背景に、投資や大型契約をちらつかせて外交交渉を優位に運ぶこと。

  • 【大谷翔平】

    1994年生まれのプロ野球選手、花巻東高校から北海道日本ハムファイターズに入団。投打の二刀流として活躍し、2018年ロサンゼルス・エンゼルスに移籍した。

  • 【ご飯論法】

    言い逃れ答弁の論法で、「朝ごはんを食べましたか?」という質問に「(朝、パンは食べたけど、ごはん=米飯は)食べていない」と答えるようなやり方。

  • 【発信】

    電子メールのごとく、広く世間に知らせることを意味する。

  • 【敬称略】

    氏名を表記する際に、敬称を省くこと。また、その断りを入れる表記。≪補説≫敬称を省く点では「呼び捨て」と共通するが、敬称略は待遇表現ではない。文字数が限られている場合による措置で、その人に対して敬意を払わないということではない。

  • 【シンデレラバスト】

    シンデレラサイズのバストの略。小さい胸のこと。

※ 投稿された語釈がそのまま収録されるのではなく、編集部が新たに執筆陣に依頼し『大辞泉』各種アプリなどに収録する予定です(一部の新語は、2018年8月改訂時に既に収録しています)。