これまでの受賞作品 第5回
大辞泉が選ぶ新語大賞

  • 大賞

    【三密】

    ①密教で、身・口・意の三業。手に印を結ぶ身密、口に真言を唱える口密、心に本尊を観念する意密。
    ②感染症の蔓延を防ぐために、人々が避けるべき3つの行動。換気の悪い密閉空間に居ること・多くの人が密集する場所に居ること・近距離での密接した会話をすること。令和2年(2020)、COVID-19流行の際に東京都が提唱した。

  • 次点

    【コロナ禍】

    新型コロナウイルス感染症の流行によって引き起こされる、さまざまな災い。感染症自体だけでなく、それを抑止するための経済活動の自粛や停滞、人々の疑心暗鬼なども、広く含む。

※ 【三密】の(1)は1995年刊の『大辞泉』初版から掲載されている既存語釈です。
※ どちらも編集部執筆の正式な語釈で、【三密】(2)は2020年4月に既に、【コロナ禍】は12月に公開予定です。

2020年
新語投稿数
ベスト10

  • 【経年美化】
  • 【コロナウイルス/新型コロナウイルス】
  • 【コロナ○○】
  • 【自粛警察】
  • 【三密】
  • 【オンライン○○】
  • 【ぴえん】
  • 【アベノマスク】
  • 【おうち時間】
  • 【Go To ○○】

選評

選考委員

『明治大学国際日本学部教授』田中 牧郎 たなか まきろうの顔写真

明治大学国際日本学部教授

田中 牧郎 たなか まきろう

1962年・島根県生まれ。東北大学文学部・卒業。東北大学大学院文学研究科・修士課程修了。東京工業大学大学院社会理工学研究科・博士課程修了。明治大学国際日本学 部・教授。国立国語研究所・運営会議委員。主な著書に『図解 日本の語彙』(三省堂/共著)。『近代書き言葉はこうしてできた』(岩波書店)。『コーパ スと日本語史研究』(ひつじ書房/共著)ほか。

『大辞泉』おおえ かずひろの顔写真

『大辞泉』

大江 和弘 おおえ かずひろ

1971年・山形県生まれ。新聞社勤務を経て小学館入社。『女性セブン』『ビッグコミックスピリッツ』編集部などを経て、国語辞典編集部に。以降、主に『大辞泉』を担当。 直近の編集書籍は『小学生のミカタ おもしろ方言47都道府県まるわかり!』。

総  論

田中牧郎教授の選評

まさに、新型コロナ関連語づくめの1年。ウイルスの名や病名、治療法・医療機器の名や社会現象など、新語でないものも含め、さまざまな言葉が私たちの目に触れました。「大辞泉新語大賞」選考において、まず、その中から選ぶのか、敢えて他からとするのかを迷いましたが、2020年を象徴する語というテーマを考えると、やはり、コロナ関連を外すのはためらわれました。【医療崩壊】【自粛警察】など、ショッキングな言葉の組合わせで耳目を引いた言葉もあります。【オーバーシュート】【ロックダウン】も耳馴れない恐ろしい言葉でしたが、金融用語などしては既存だったので、純粋な新語とは言い切れません。そんな中【三密】は、小池東京都知事が印象に残る方法で発信したということもあり、一気に拡がりました。これによって、東京のみならず日本人全体の行動変容に一定の成果を収めたのではないかとも感じます。しかし『大辞泉』には、仏教語として既収録の言葉。新語ではなく、新語義としての大賞となります。【コロナ禍】は、今の世界の状況を言い表す言葉で、これを克復しよう、新しい生活様式を見出して、なんとか切り抜けていこうという願いを共有するのに、大事な言葉になっています。その思いへの応援も込めて次点としました。日本語学者としては、【○○禍】が造語成分として今後発展性を持つかどうかも気になるところ。2017年の大賞【インスタ映え】は、その後【TikTok映え】という語に繋がり、【映(ば)える】という独立した言い方も拡がりました。不幸が続くのは困りますが【○○禍】は今後、派生するのでしょうか、注目です。

編集部の選評

毎年恒例の「大辞泉が選ぶ新語大賞」に、2020年も約2000本のご投稿、誠にありがとうございました。しかし、第5回にして、2020年は最大の難局に直面してしまいました。それは、世の中も投稿も「コロナ1色」に染められてしまったということ。まずは、投稿数ベスト10をご覧ください。(1)【経年美化】356本、(2)【コロナウイルス/新型コロナウイルス】102本、(3)【コロナ○○】56本、(4)【自粛警察】42本、(5)【三密】38本、(6)【オンライン○○】34本、(7)【ぴえん】24本、(8)【アベノマスク】23本、(9)【おうち時間】22本、(10)【Go To ○○】17本。1位と7位以外、すべて新型コロナ関連語がランクインしています。読者・ユーザーの皆さまも「コロナ以外で2020年の新語、思い浮かぶ?」と自問すると、あまり出てこないのではないでしょうか。不幸にも、言葉の世界でもコロナのインパクトが強すぎて、一般的な新語はあまり生まれなかった1年と言えます。【経年美化】は故・三浦春馬さんが生前、テレビ番組で語った言葉として、そのオンエア直後に爆発的な投稿がありました。三浦さんの発言として以外に、今後、定着し使われる場面が増えるようでしたら、新語として採用していくことになります。大賞とした【三密】は、既にアプリ版やweb版の『大辞泉』に収録されていますので、そこでもご覧いただけましたら幸いです。来年こそは、コロナ以外の多彩な言葉が生まれる年になってほしいと、願わずにはいられません。

『大辞泉』に採用が
決定した
新語をご紹介します

キャンペーン期間中に投稿された
1,933語の新語の中から、
実際に『大辞泉』に採用する可能性のある
新語を編集部が毎月選定しました。
合計47語の新語が選ばれました。

皐月/水無月

5 6

  • 【エッセンシャルワーカー】

    災害時やパンデミック時にも職務の遂行が社会から要請される仕事に就いている人々。

  • 【置き配】

    コロナウイルスの感染拡大に伴い、宅配事業者の間で広がる直接対面せずに荷物を受け渡す方法。

  • 【後手後手】

    物事が後手に回っていることを強調した言い方。

  • 【東京アラート】

    東京都内の新型コロナウイルス感染者が足元で増加し、再拡大の兆候が表れた際に出す警戒情報。

  • 【人狼】

    市民チームと人狼チームに分かれ、会話をしながら相手の正体を見抜いていくゲーム。

  • 【フェイスシールド】

    人の顔面を保護する樹脂製などの板。新型コロナウイルス流行時に一般化した。

文月

7

  • 【スルースキル】

    周囲からの批判や不快な言動を聞き流し、無視する能力。鈍感力。

  • 【転売ヤー】

    需要が高まる商品を買い占め、高額で転売する悪質な転売屋の事。転売屋とバイヤーをかけあわせている。

  • 【夜の街】

    接待を伴う飲食店やゲームセンターなど深夜営業店が密集する街のこと。

  • 【アンティファ】

    反ファシスト(アンチ・ファシスト)を意味するドイツ語や英語の短縮形。

  • 【昼カラ】

    お昼からするカラオケ。または日中に昼食などの飲食とともにカラオケができる店。

  • 【コロナ禍】

    2019年から全世界で大流行した新型コロナウイルス感染症によって引き起こされた不幸な影響のこと。

  • 【ウィズコロナ】

    新型コロナウイルスの完全な征圧を目指すのでなく、治療体制を整えつつ、適切なリスク管理を行う社会の在り方。

葉月

8

  • 【ブラック・ライブズ・マター】

    アメリカ合衆国を中心に展開している、黒人の抑圧状態に抗議する運動。

  • 【レジ圧】

    スーパーマーケットのレジでまごまごしていると、後ろに人がいっぱい。小銭を出そうと思ったけど圧を感じてお札にしてしまう。

  • 【エピセンター】

    感染症の発生源。

  • 【リベンジ夜ふかし】

    昼間の時間を有意義に過ごせなかったときに、夜遅くまで寝ずにそのマイナス分を取り戻そうとすること。

  • 【コピーパスタ】

    インターネットやツイッターなどで、同じフレーズをコピー、ペーストしてあちこちに拡散する行為。特定の個人を攻撃したりプロパカンダを広げたりする目的で使われることが多い。

  • 【置きっぱ】

    「置きっぱなし」を縮めたもの。

長月

9

  • 【経年美化】

    年月を経るにつれ、人や物の味わいや輝きが増すこと。

  • 【あごマスク】

    マスクをずらして顎だけに着け、口元が見える状態にしていること。

  • 【隠れ感染】

    自覚症状が無いために所定の検査を受けずに、感染していながら感染者としてカウントされないこと、またその人。

  • 【マスクマジック】

    ゲレンデマジックならぬマスクマジック。異性がいつもより美しく見えてしまう現象。

  • 【デジタル庁】

    菅義偉首相が設立を検討している官庁。国や地方のデジタル政策を一元的に管轄し、各省庁へ命令権を持つ司令塔となる組織。

  • 【がん○○】

    「がんがん」を略した接頭語。続く言葉を強調する。「がん見」「がん無視」など。

  • 【○○警察】

    接尾語として、ある事柄についての自身の正義感を乱暴にふりかざす人。

神無月

10

  • 【ボディポジティブ】

    痩せた体型=美といった従来の基準から脱却し、ありのままの身体を愛そうというムーブメント。

  • 【チャレンジド】

    障害者をあらわす英語。チャレンジド・パーソンなどとも。

  • 【魔改造】

    フィギュアや自動車などで、通常の改造の範疇を大幅に逸脱した改造のこと。

  • 【ゼブラ企業】

    利益優先の成長ではなく、持続可能性や共存性も大切にする企業。

  • 【ツインデミック】

    COVID-19とインフルエンザの流行が重なること。

  • 【匂わせ】

    写真の隅に異性の身体の一部や高級品などを写り込ませ、充実した生活を遠回しにアピールする投稿。

  • 【ロジハラ】

    論ばかりを突きつけて、相手を追い詰めるハラスメント。

  • 【性的同意】

    あらゆる性的な行為を行う前に、その行為に対して相手から明確な同意を得ること。

霜月

11

  • 【前持ち】

    混雑した電車の中で、リュックサックが周囲の邪魔にならないように、胸の方に持つこと。

  • 【きめハラ】

    鬼滅の刃を読んでいない人を、遅れているとけなすこと。

  • 【ペトリコール】

    雨が降った直後に感じられる匂い。

  • 【脱ハンコ】

    行政改革や働き方改革の一環として、従来から続いてきた押印を廃止すること。

  • 【やらせレビュー】

    高評価のクチコミを作り上げ、あたかも店や商品に価値があるよう見せかけること。

  • 【セドラー】

    古物など安く売られているものを購入し、転売して利益を稼ぐこと。「瀬取り」から。

  • 【萌え袖】

    上着などの袖丈が長く、着ている人の可愛らしさが強調される状態。男女問わず用いられる。