これまでの受賞作品
第9回
大辞泉が選ぶ新語大賞
-
大賞
【ホワイト案件】
本来は犯罪にならない仕事のことだが、SNSで強盗などの闇バイトがホワイト案件と偽って募集されることがあり、社会問題となっている。
※ウッシャンさん投稿の語釈 -
次点
【フキハラ】
「不機嫌ハラスメント」の略。これみよがしなため息など、不機嫌さを押し出すハラスメント。
※妥協老人さん投稿の語釈 -
次点
【静かな退職】
企業に属しつつ、やりがいを求めず、必要最低限の仕事のみ淡々とこなす働き方。あたかも退職したかのように、仕事に対するエネルギーを失いつつ働くこと。
※クラゲさん投稿の語釈
2024年
新語投稿数
ベスト10
- 【50-50(フィフティ-フィフティ)】
- 【インプレゾンビ】
- 【風呂キャンセル界隈】
- 【猫ミーム】
- 【ホワイト案件】
- 【メロい】
- 【もしトラ】
- 【石丸構文】
- 【マルハラ】
- 【無課金おじさん】
※【推し活】も上位でしたが一昨年、昨年も投稿ベスト10入りしていたので除外しました。
選評
選考委員
-
明治大学国際日本学部教授
田中 牧郎たなか まきろう
1962年・島根県生まれ。東北大学文学部・卒業。東北大学大学院文学研究科・修士課 程修了。東京工業大学大学院社会理工学研究科・博士課程修了。明治大学国際日本学 部・教授。国立国語研究所・運営会議委員。日本語学会・理事。主な著書に『図解 日 本の語彙』(三省堂/共著)。『近代書き言葉はこうしてできた』(岩波書店)。『コーパ スと日本語史研究』(ひつじ書房/共著)ほか。
【ホワイト案件】
【闇バイト】と対をなす言葉ですが、
じつは同義語――
大賞
昨年の『大辞泉』新語大賞、次点の新語が【闇バイト】でした。今年の【ホワイト案件】は、それと対になる新語といえます。いや、【ホワイト案件】は、本当は闇であることを隠して、さも安全な仕事のように見せているだけですから、対ではなく、むしろ同義語なのかもしれません。昨年までの報道では、犯行グループは悪事と分かって参加しているふうでしたが、今年は凶悪化・頻発化が進む一方、末端の実行犯は【ホワイト案件】だとダマされ、途中からは脅されてやらされている被害者の面もあるということが分かってきました。これらを示す【匿名・流型犯罪】や、その略称【トクリュウ】という言葉も数多く投稿されました。
そう自称することは減り、巧妙化するはず…。

【フキハラ】
怒りを抑えているのに、
それでも責められる場合も――
次点
部下や配偶者などに、ガミガミと直接怒ることはしないものの、これみよがしな態度で怒りを示してしまうのが不機嫌ハラスメント、略して【フキハラ】。具体的には、ため息・舌打ち・無視・無言になるなどなど。ドアの開閉やパソコンのタイピングで大きな音を立てるケースもあるそうです。やられた側は、具体的な言葉で責められているわけでないので、釈明や反論できない……これがストレスになるというわけです。しかし、やってしまっている側は、「ホントは怒りたいけど、それは我慢する」という時点で、一定の譲歩をしているんだ! という気持ちかもしれません。上の「総論」でも触れた【マルハラ】のように、世代や立場によって、相手が何を不快に思い、恐怖しているかが分かりづらい時代。手探りの生き方は、お互いにとって疲れてしまいますね。
受け止められることがあるのだとか。

【静かな退職】
「なまけ」との境界を超えずにどう
過ごすか、それなりのテクニックが必要?
次点
パ~ッとにぎやかな送別会ナシの退職……ではありません。実際は、まだ退職していないビジネスパーソンが、あたかも既に退職してしまったかのように、最低限、やるべきことのみやるだけという状態のことです。2022年、米国のあるキャリア・カウンセラーが「quiet quitting」という生き方を提唱し、世界中で支持されたのが始まり。日本では、直訳の【静かな退職】が、昨年ごろからメディアで見られるようになりました。このような働き方をする動機は、私生活を重視してワークライフバランスを求めるというポジティブなもののほか、もう出世は見込めないと分かったから、本当の定年退職まで適当にやり過ごすという考えもあるといいます。どうにかこうにか終身雇用制が残っている日本だから許容される働き方のように思えますが、ドライな雇用制度の米国発祥だというのは意外な感じを受けます。また、中高年だけでなく若い世代にも広まりつつあるという調査もあり、頭を悩ます経営者も多いことでしょう。
「静か」とはいかなくなりそうです。

『大辞泉』に採用が決定した
新語をご紹介します
キャンペーン期間中に投稿された2,731語の新語の中から、
実際に『大辞泉』に採用する可能性のある新語を編集部が毎月選定しました。
合計35語の新語が選ばれました。
-
5月
6月
皐月/水無月
-
【もしトラ】
2024年に行われるアメリカ大統領選で「もしトランプ氏が再選したら」の略。再任した場合、対策の必要性や各方面への影響が懸念されることから使われだした。
-
【文転】
高校生・大学生などが、理科系から文科系に〈所属/志望〉を変えること。
-
【猫ミーム】
猫を使ったインターネットミーム全般。とくに過去にバズった猫の動画の切りぬきを素材として、台詞やキャプションをつけた、日常生活を中心とした再現動画のこと。
-
【インプレゾンビ】
X(旧Twitter)で投稿のインプレッション数を稼ぐために迷惑な投稿を繰り返すアカウント。
-
【スペパ】
スペースパフォーマンスの略。限られた空間を利用してどれだけの利便性や快適さが得られるか。
-
【エシカル就活】
就活生が、受ける企業を選ぶ際に、社会問題に対してどのような取り組みを行っているかを軸に考えて行う就職活動。
閉じる
-
-
7月
文月
-
【トナラー】
バスや電車などで、他に空席があるのに意図的に特に女性の隣に座ろうとする人。
-
【経済圏】
国際的または国内的に密接な経済関係のある一定の地域。また、消費や投資といった経済活動を特定の会社のサービスで完結させること。
-
【スケジュール感】
仕事などで相手にどんな流れでスケジュールを考えているかを聞きたいが、ダイレクトに聞くのが失礼にあたりそうな時に、遠回しに聞く表現。
-
【フキハラ】
不機嫌ハラスメントの略。ドジをしてしまった後輩が「すいませんでした」と言っている前で、先輩が「はあ…」とためいきをつくように相手を不機嫌にさせること。
-
【可食部】
食べられる部分。
-
【応援上映】
映画館で、声を出して応援しながら鑑賞することができる上映。
閉じる
-
-
8月
葉月
-
【スポーツウォッシング】
国家がスポーツを利用して、自身のイメージ向上や問題の隠蔽を図る行為。
-
【氷タンフル】
氷水の中に冷凍フルーツを入れ、混ぜると、冷凍フルーツに氷の層ができて、食感がフルーツ飴のようになる。
-
【ラン活】
ランドセルの購入活動。ランドセルを求めて全国の小学生に上がる子供をもつ親がする行動。
-
【傾聴地蔵】
話を聴いて頷くだけで何もしてくれない上司。
-
【ソーラーパンク】
太陽光発電などの持続可能エネルギーの技術が発展し、自然とテクノロジーが共存した未来社会のこと。またはそうした社会・思想・イメージを描いたジャンル。
-
【南海トラフ地震臨時情報】
発生が予想されている南海トラフ巨大地震に関して、想定震源域およびその海溝軸外側50キロメートル程度の範囲で異常が発生した場合など地震発生可能性が相対的に高まった際に気象庁が発表する情報。
閉じる
-
-
9月
長月
-
【キダルト】
キッド+アダルトの造語。子供の心を持った大人。玩具などに熱中する大人。
-
【スンとする】
真顔になり、感情が無になる。
-
【静かな退職】
企業に属しつつ、やりがいを求めず、必要最低限の仕事のみ淡々とこなす働き方。あたかも既に退職したかのように、仕事に対するエネルギーを失いつつ働くこと。
-
【50-50】
(フィフティ-フィフティ)大リーグで1シーズン50本塁打50盗塁を達成すること。大谷翔平選手が従来の40-40を超えて達成し話題となった。
-
【まんが盛り】
白米を茶碗からはみ出るまで盛ること。
-
【VIO】
(ブイアイオー)Vライン・Iライン・Oライン。デリケートゾーンを、三つの文字の形に見立てたもの。
閉じる
-
-
10月
神無月
-
【猫ミーム】
猫の面白い画像や動画を使って日常の出来事やあるあるネタを再現した動画。
-
【ホワイト案件】
本来は犯罪にならない仕事のことだが、SNSで強盗などの闇バイトを偽って募集するときの称。
-
【解像度が高い】
まるで画像が鮮明に見えるかのごとく、物事や思考の詳細がはっきりとし理解されやすいこと。
-
【あれオレ詐欺】
あれはオレがやった仕事とか、オレのおかげで成功した、などと自分を誇示すること。
-
【退所】
芸能人が事務所を離れて独立すること。
-
【ホス狂い】
ホストにハマり、大金を貢ぐ女性。ホスト依存症。
閉じる
-
-
11月
霜月
-
【103万円の壁】
基礎控除と給与所得控除を合わせた額が103万円で、年収がこれを超えると所得税が発生する。アルバイトで働く学生の場合、親の所得税の控除に影響することがあり、注意が必要。
-
【ソフト老害】
年上と年下の間に立ち、年下の意見をくみ取ったつもりが実はその行動が老害にみえている状態。
-
【トクリュウ】
匿名・流動型犯罪グループの略。自分たちが何者かを名乗らず、匿名性の高いSNSなどで実行役を集めて、特殊詐欺などの犯罪を行う集団。
-
【誤用警察】
単語や慣用句などの誤用を点検して、ことさらに指摘する人。
-
【マルハラ】
SNSなどの文章が「。」で終わると若者は威圧的でハラスメントを受けたように感じる、というもの。マルハラスメント。何でもかんでもハラスメントにしてしまうのは若者から年長者へのハラスメントともいえる。
閉じる
-