これまでの受賞作品

第8回
大辞泉が選ぶ新語大賞

  • 大賞

    【生成AI】

    あらかじめ学習したデータをもとに、画像・文章・音楽・デザインなどを新たに生成する人工知能の総称。拡散モデルやGANなどの機械学習の手法により、文章からイラストを作成する画像生成AIや、人間と対話しているかのような自然な言葉遣いで文章を生成する対話型AIなどが開発されている。
    ※大辞泉の語釈(4月立項)

  • 次点

    【闇バイト】

    強盗や詐欺などの犯罪の一部分をアルバイトとして代行すること。
    ※のんちゃんまんさん投稿の語釈

  • 次点

    【蛙化現象】

    心理学で、好意を持つ相手が、自分に好意を持ち始めると、相手に嫌悪を感じる状態、嫌われるかもしれないという不安から起こる自己防衛とみられている。
    ※大辞泉の語釈(10月立項)

2023年
新語投稿数
ベスト10

  • 【2世信者/宗教2世】
  • 【ウクライナ侵攻】
  • 【ととのう】
  • 【大谷ルール】
  • 【顔パンツ】
  • 【メタバース】
  • 【知らんけど】
  • 【国葬儀】
  • 【インボイス制度】
  • 【おじさん構文】

※【マスク美人】【推し活】も上位でしたが、昨年も投稿数ベスト10入りしていたので除外しました。
※【ととのう】は一般的な「整う」でなく、サウナで爽快になるという意味での投稿でした。

選評

選考委員

  • 『明治大学国際日本学部教授』田中 牧郎 たなか まきろうの顔写真

    明治大学国際日本学部教授

    田中 牧郎たなか まきろう

    1962年・島根県生まれ。東北大学文学部・卒業。東北大学大学院文学研究科・修士課 程修了。東京工業大学大学院社会理工学研究科・博士課程修了。明治大学国際日本学 部・教授。国立国語研究所・運営会議委員。日本語学会・理事。主な著書に『図解 日 本の語彙』(三省堂/共著)。『近代書き言葉はこうしてできた』(岩波書店)。『コーパ スと日本語史研究』(ひつじ書房/共著)ほか。

  • 『大辞泉』大江 和弘 おおえ かずひろの顔写真

    『大辞泉』

    大江 和弘おおえ かずひろ

    1971年・山形県生まれ。新聞社勤務を経て小学館入社。『女性セブン』『ビッグコミッ クスピリッツ』編集部などを経て、国語辞典編集部に。以降、主に『大辞泉』を担当。 直近の編集書籍は『小学生のミカタ おもしろ方言47都道府県まるわかり!』。

【生成AI】

【生成AI】は一過性の言葉かも
しれません。その根拠は――

大賞

【生成AI】の光と影、希望と危険性を語るのは専門家にお任せし、ここでは、新語としての側面に着目します。学習済みデータから答えを選ぶ従来のAIと異なり、無から有を生み出す【生成AI】は革新的な技術です。しかし、それにしては「生成」という言葉がくっついただけで、新語として地味に感じませんか? 「生成」は英語のgenerative(何かを生み出せる)の直訳なわけですが、私は、いずれこれが取れて、こちらを単に「AI」と呼ぶようになると思います。たとえば、現在「車」といえば自動車を指します。しかし、大正時代までは「お車を呼びますね」と言われれば、やって来たのは人力車でした。その後、新顔のガソリン車に「自動」と付けて造語したわけですが、すぐに「車」の呼称は自動車に取って代わられました。これと同じことが【生成AI】に起こる気がしてなりません。さて、どうなるか? 皆さまも注目しておいてください。

「未来の国語辞典」というお題から、
生成AI『Stable Diffusion』が創造した画像。

【闇バイト】

言葉の「安心感」がもたらす不幸?
バイトではない【闇バイト】

次点

キャンペーンにいただいた【闇バイト】の投稿は31件。そして、その多くが「違法なアルバイト」といった語釈でした。しかし、これは本当にアルバイトなのでしょうか? アルバイトに明確な定義はありませんが、パートタイム雇用とともに一定の法的保護の対象となっています。このため、SNSなどで【闇バイト】に誘われると「闇」とは言うものの「バイトなのだ」という気軽さと安心感から、犯罪に手を染めてしまった人がいるような気がします。言葉には、ものごとを正しく伝える本来の力だけでなく、逆に、本質をオブラートに包んでしまう力もあります。「パパ活」「やんちゃ」「いじる」などが代表的なオブラート表現ですが、【闇バイト】にもそれと同様な効果があるのでしょう。最初から「殺人にまで至る可能性がある仕事だ」と明かしてしまっては、わずかな報酬で引き受けるわけがありませんよね。

一度手を染めると、それ自体を弱みとして握られ、
なかなか抜けられないといいます…。

【蛙化現象】

生まれたての【蛙化現象】にふたつ
の意味。上書きが起こる?――

次点

グリム童話『かえるの王様』が元となった言葉です。しかし、上掲の『大辞泉』の語釈を読んで「あれ?」と思う方もいるかもしれません。「交際相手の些細な行動がきかっけで、嫌いになること」と、特に若い方はとらえているのではないでしょうか。この言葉が現れたのは2000年代はじめですが、近年、いわゆる誤解釈が広まったことで注目されました。新しい言葉なので、意味の上書きは容易に起こりえます。新解釈が定着すれば『大辞泉』にも加筆が必要になるかもしれません。

童話『かえるの王様』は、
醜いカエルがじつは隣国の王子様だったというストーリー。

『大辞泉』に採用が決定した
新語をご紹介します

キャンペーン期間中に投稿された1,773語の新語の中から、
実際に『大辞泉』に採用する可能性のある新語を編集部が毎月選定しました。
合計29語の新語が選ばれました。

  • 5

    6

    皐月/水無月

    • 【蛙化現象】

      好意を抱いている相手が自分に好意を持っていることが明らかになると、その相手に嫌悪感を抱いてしまうこと。

    • 【闇バイト】

      高額な報酬と引き換えに、違法な行為をするアルバイト。

    • 【タイパ】

      タイムパフォーマンスの略。ある時間を投じて、それから得られるものがかけた時間に見合うかどうか。

    • 【公金チューチュー】

      NPO法人など補助金をもらって活動している団体が、本来の目的からは外れ、私利私欲や政治的活動など、目的外使用をしているさま。

    • 【ペッパーミル】

      MLBのヌートバー選手を中心に侍ジャパンチームで流行したパフォーマンス。いいプレーをした時に行われる。胡椒のように「身を粉にする」という意味も含まれる。

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  • 7

    文月

    • 【ヒートドーム】

      高気圧が数日、時には数週間ほど停滞して、温かい空気に蓋をすることによって熱を閉じ込める現象。

    • 【地球沸騰化】

      世界中での異常な高温化を受けて登場した、地球温暖化に替わる語。7月に国連総長が警告した際に使った。

    • 【ネッククーラー】

      首輪のような装着する冷却用品。保冷剤が充填されているものと、ファンが付いた機械式のものがある。

    • 【ステルス増税】

      社会保険料の上乗せや控除の縮小など、国民が気づきにい実質的な公的負担増。

    • 【ブラックフェイス】

      ブラックルーツの人を模倣し、顔などの肌を黒く塗ること。 人種差別の歴史にひもづく行為で、アメリカなどでは批判の対象となっているが、日本のエンタメ業界などでは依然として繰り返されている。

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  • 8

    葉月

    • 【撮影罪】

      性的な盗撮行為による犯罪。2023年7月より施行。

    • 【鬼肩】

      野球で、球を早く遠くまで正確になげることの出来ることを意味する「強肩」を、はるかにしのぎ、まるで「鬼レベル」と言われてる選手の肩のこと。

    • 【デジタル免疫】

      デジタルシステムの安全を脅かすあらゆる危険性に早急に対応して、システムの保守や回復をする仕組み。

    • 【バーティポート】

      垂直離着陸できる航空機が離着陸する飛行場。vertical(垂直)とairport(空港)の合成語。住宅地や都心部にも設置できるようになったことで空を使った移動がより身近な存在になる。

    • 【溶かす】

      知らぬ間に時間が経っていたり、時間を空しく費やしたことを表現した言葉。時間つぶしを指すこともあるが、否定的な意味で使われることが多い。

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  • 9

    長月

    • 【アフターコロナ】

      新型コロナが5類相当になり、自粛を解除して活動できるようになること。

    • 【頂上決戦】

      分野の秀でた者たちが、頂点をかけて戦うこと。

    • 【ナイトタイムエコノミー】

      概ね午後6時頃から翌朝6時頃まで経済活動が出来るように商業活動をすること。

    • 【一周回って】

      〔流行が一周するように〕程度が進んだ結果、結局もとに もどって。かえって。一回りして。一回転して。一周して。

    • 【借りぱく】

      借りたものをそのまま自分のものにすること。

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  • 10

    神無月

    • 【トーンポリシング】

      相手の意見の内容でなく、話し方や態度などを批判し、論点をずらすこと。

    • 【勝負飯】

      ここぞという勝負時に食べるご飯。

    • 【確信歩き】

      ホームランを打った事を確信した打者がゆっくり歩きながら一塁へ向かうこと。

    • 【八冠】

      将棋界の8つのタイトル(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖・叡王)。また、これらすべてを制覇すること。

    • 【マウンティング】

      人間関係の中で、自分の優位性を誇示すること。

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  • 11

    霜月

    • 【頂き女子】

      男性と親密な関係になり、同情を買うなどして金品を貢がせる女子。

    • 【サ終】

      サービス終了の略語。特にスマホアプリなどのサービスが終了するときに使われる。

    • 【アーバンベア】

      都市部に住むクマ。

    • 【かわちい】

      可愛いの言い換え。可愛いに比べ幼さをアピールした言い換え。

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